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光遺伝学に新たな可能性! 光受容タンパク質の未知の特性を明らかに

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概要

https://www.nature.com/articles/s41598-018-21946-1

(参考)動物の光受容は、視覚(図Ⅰ)に関するものと、そうでないのもの=非視覚(図Ⅱ)に分類される

動物における光受容のイメージ

180226-1.png 180226-2.png

研究概要

180226-3.png 動物は、光を受容し、その光情報をかたちや色を見る視覚に利用するだけでなく(図Ⅰ)、生体リズムの調節など、視覚以外(非視覚)の機能(図Ⅱ)にも利用しています。光は「光受容タンパク質」と呼ばれる特別な光センサータンパク質によりキャッチされ、神経の興奮などの生体の信号に変換されます。
 動物はさまざまな光受容タンパク質を持つことが知られています。たとえば、ヒトは9つの光受容タンパク質の遺伝子を持っています。そのなかで、4つは視覚の機能に、残りの5つは非視覚の機能に関わると考えられていますが、具体的な機能は完全には明らかになっていません。
今回、これら5つの非視覚の光受容タンパク質の一つで、無脊椎動物にも存在している「ペロプシン」と名付けられた光受容タンパク質が、これまでに知られていない特徴を持つことを明らかにしました。
 光受容タンパク質は、光をキャッチするためにビタミンAの仲間(レチナール)を補助的な分子として結合しています。視覚の光受容タンパク質は「曲がり型」の補助分子を結合していて、光をキャッチするとこれが「まっすぐ型」に変化し、光受容タンパク質がON型となり、それが引き金となり生体信号が生じます。
 一方、興味深いことに、ペロプシンは視覚の光受容タンパク質とは全く逆の振る舞いをすることを見出しました。具体的には、2種類の無脊椎動物のペロプシンを用いて、培養細胞中の生体信号を誘発できるように改変した変異体を作製し、その変異体による生体信号の誘発の詳細を解析しました。その結果、ペロプシンは、暗中では「まっすぐ型」の補助分子を結合しON型であり、生体信号を生じさせているが、光をキャッチすると発色団が「曲がり型」に変化してOFF型になることが示唆されました。
 すなわち、一般的な光受容タンパク質は「暗で不活性、光で活性化」であるのに対して、ペロプシンは「暗で活性、光で不活性化」というユニークな光受容タンパク質である可能性を見出しました。ペロプシンは、一般的には目に存在する光受容タンパク質ですが、具体的にどのような機能に関わっているのかは、ほとんど明らかになっていません。今後、本研究により発見された「真逆の分子特性」を入り口として、機能解明が進むものと期待されます。

本研究の波及効果

 近年、遺伝子組み換え技術と光受容タンパク質を利用した新しい技術である光遺伝学が注目されています。光遺伝学では、実験動物の狙った細胞に光受容タンパク質を持たせておき、光を当てることで、生きた動物の中で狙った細胞の活動を制御できます。これにより、特定の神経細胞などの機能を動物の行動と結びつけて明らかにすることが可能となることから、光遺伝学は特に脳科学や神経科学の分野で重要な技術となっています。
 生体内の細胞はさまざまな生体信号により多様な活動パターンを示すことから、細胞の活動を意図的に制御するためにはさまざまな性質を持つ光遺伝学ツールが必要となります。今回発見されたペロプシンの光でオフになる性質を利用すれば、「神経細胞を刺激なしに興奮状態に保ち、光により不活性化する」ことが可能となるので、ペロプシンは新たな光遺伝学ツールとして注目されます。

資金情報などについて

 本研究はマンチェスター大学(英国)の協力と下記の科研費による資金援助を得て実施されました。

『非視覚の光受容におけるオフ?シンの分子特性と機能の関係』2015年度~2019年度
『動物の多様なロト?フ?シン類を利用した新しい光遺伝学的技術の確立』2013年度~2014年度
『ハエトリグモの視覚?非視覚系に着目した動物のUV光利用の多様性の解析』 2014年度~2017年度
『数理解析に基づく生体シグナル伝達システムの統合的理解』2017年度~2018年度